わからんから面白い魏志倭人伝

三国志の時代の魏志倭人伝にはわからん事が多い。わからんからそのまま想像力を働かして楽しんじゃお!

韓半島が見えるか?

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古事記日本書紀で「海を渡って新羅を征服せよ」との神のお告げに対し、仲哀天皇は「海の向こうにそんな国は見えないではないか」と反対した。神に逆らった仲哀天皇はあえなくお亡くなりになった。

羅針盤もまともな時計もない古代の航海において、目的地が見えるという事が必須だったから、仲哀天皇の反対は技術的には理にかなっている。

 

そこで、どこまで遠くが見えるか理論的に考えてみる。

まず、海が真平なら、どんなに遠くの島でも(視力が良ければ)見えるはずだ。という事は逆に言うと、地球が丸いから遠くは見えなくなる。

 

理論的にどこまで見えるかは、上図に則って計算できる。上図にある式は、ピタゴラスの定理を用いて、地球の半径Rが山の高さHや人の眼の高さ(~身長)hに比べて非常に大きい場合の近似式として求められる。数学に興味のある人はトライして欲しい。

地球の半径は6400km(R=6400km)だ。

上図の式から、身長1メートル60センチ(h=1.6m=0.0016km)の人が見る水平線(H=0m =0km)はたったの4.5kmでしかない。我々は海岸で「海は広いな大きいな」などと考えるが実はたった半径4.5kmの円盤形の海面しか見ていない。

ただしそこに浮かぶ船は高さがあるからもっと遠くから見える。見えてないのは船のまわりの海面だ。

では、次に、対馬沿岸から韓半島が見えるか上記式で計算する。釜山では金井山という801.5mの山がある。この山は106km先から見えるから50-60kmの距離の対馬沿岸から十分見える。

逆に韓半島から対馬はどうか。対馬の最高点が648.5mで、見える距離は96kmだからこれも見える範囲内だ。

むしろ対馬から壱岐が見えるか問題だ。壱岐の最高点が212.8mだから見える範囲は57km以内だ。ぎりぎり見えるかどうかだ。一応範囲内だから見えると思う。

あと航海術の本に書いてあったが、陸地のある上空には上昇気流による雲が立つらしい。そうした雲によっても目的地を見失わないようにできる。

壱岐から九州へは距離も短いし、九州に山は多いから問題なく見えるだろう。

ここで仲哀天皇の「韓半島がみえるか」という御質問に立ち返る。釜山と山口県が最短で177kmだ。釜山と九州よりも少し近い。先の釜山の山は106kmの範囲でしか見えないから、山口県の沿岸からは見えない。

しかし、晴れた日の見通しのいい日に、山口県の500mの山に登れば(つまりh=500mとする)釜山の山のてっぺんがかすかに見える計算になる。

というわけで、普通には見えない。

しかし対馬まで行けば見える。日本書紀には、対馬の人が神功皇后韓半島が見えると報告している。その報告があって初めて神功皇后新羅へ向かう事ができた。